NASDAQ100 vs NASDAQ総合:どちらを見ればいい?初心者のための比較ガイド

アメリカ株投資に興味を持つと、多くのニュースで「NASDAQ100」と「NASDAQ総合(NASDAQ Composite)」という言葉を目にします。しかし、名前が似ているため「どう違うの?」と混乱しがちです。この記事では、金融初心者の方にもわかりやすいよう、「NASDAQ100」と「NASDAQ総合(NASDAQ Composite)」の基本から計算の仕組み、注目される理由、さらには両者の違いについて具体的に比較しながら解説します。

NASDAQ100・NASDAQ総合とは?

まず、NASDAQ100とは、NASDAQ市場に上場する企業の中で、時価総額が大きく、かつ流動性が高い100銘柄を対象にした株価指数です。1985年に設立され、主にIT、消費財、半導体、人工知能(AI)など、技術中心の産業に属する大手企業が多く含まれています。例えば、アップル(Apple)やテスラ(Tesla)、アマゾン(Amazon)などが代表的な企業です。この指数は、これらの企業がどれほど市場に影響を与えているかを示す重要な指標となります。

一方、NASDAQ総合は、1971年に設立された指数で、NASDAQ市場に上場するすべての銘柄を対象にしています。この指数は、NASDAQ市場に上場する約3000銘柄を含んでおり、時価総額に基づいて計算されます。NASDAQ総合は、NASDAQ市場全体のパフォーマンスを反映するため、より広範な企業群をカバーしているのが特徴です。例えば、NASDAQ総合には、テクノロジー系の大手企業だけでなく、医療機器メーカーや消費財関連の中小型企業も含まれています。具体的な例として、スナップ(Snap Inc.)やペイパル(PayPal)、または中小型企業であるグリー(GREE)やシー・アンド・エス(C&S)などの企業も含まれています。

NASDAQ100・NASDAQ総合の銘柄に選ばれる条件とは?

NASDAQ100指数は、NASDAQに上場する約3,000の銘柄の中から、いくつかの基準に基づいて選ばれた時価総額上位100社で構成されます。選定にあたっては、まず産業分類ICB(Industry Classification Benchmark)において金融業に分類される企業を除外し、四半期ごとのリバランスの際に時価総額、上場期間、取引量、上場市場(Nasdaq Global Select Market など)等の複合的基準を満たす必要があります。S&P500指数と異なり、財務健全性に関する基準は設けられていないため、将来の成長性が期待される企業が比較的早期に組み入れられる点が特徴です。実際、米国の電気自動車メーカーであるテスラは、財務基準が不要なNASDAQ100には2013年7月に採用された一方、より厳しい財務条件を要求するS&P500には2020年12月まで採用されませんでした。

対して、NASDAQ総合には、特に厳密な選定基準はありません。NASDAQ市場に上場するすべての企業が対象となり、規模や業種を問わず含まれます。つまり、NASDAQ総合はNASDAQ市場全体の経済的な状況を示す指標としての役割を果たしています。

NASDAQ100・NASDAQ総合はどうやって計算されている?

NASDAQ100指数とNASDAQ総合指数は、いずれも時価総額加重方式で計算されており、各銘柄の時価総額によって指数に与える影響が決まります。つまり、時価総額が大きい企業ほど、その株価の変動が指数に与える影響が大きくなる特徴があります。ただし、両指数は銘柄数や範囲において大きな違いがあります。

NASDAQ100指数は、NASDAQ市場に上場する非金融株の中で時価総額が最も大きい100銘柄のみを対象にしています。金融業種は除外されており、そのため、主にテクノロジー株やその他の非金融大手企業の株価変動が指数に大きな影響を与えます。一方、NASDAQ総合指数は、NASDAQ市場に上場しているすべての銘柄を含み、金融株をはじめ約3,000銘柄以上が計算に組み込まれます。このため、NASDAQ総合指数はより広範な市場の動向を反映し、金融業界を含むさまざまな業種の変動が指数に影響を与えます。両指数は同じ時価総額加重方式で計算されていますが、対象となる銘柄の範囲が異なるため、それぞれの指数が反映する市場の動きには違いがあります。

なぜ投資家は、NASDAQ市場を注目するのか

NASDAQ市場は、特にテクノロジー企業や成長株が多く上場していることで知られています。例えば、アップル(Apple)やテスラ(Tesla)、アマゾン(Amazon)などの企業は、NASDAQを代表する銘柄です。これらの企業は、過去数十年にわたり急成長を遂げ、投資家にとって魅力的な利益をもたらしてきました。特にテクノロジー業界の革新や新興企業の台頭を反映する市場であり、その成長率や市場動向は他の市場に比べて高いリターンを狙える可能性があるため、多くの投資家が注目しています。

実際、2025年4月にはNASDAQ市場が大きな変動を経験しました。月の初めには米国の通商政策に対する懸念から大幅に下落し、2日間で約11%の急落を記録する場面もありましたが、その後、大手企業の好決算や米政府による通商協議の進展が好感され、4月末にはおおむね堅調に推移し、最終的に17,461.32ポイントまで回復しました(出典:Yahoo!ファイナンス 2025年4月29日時点)。このような激しい上下動はNASDAQ市場の変動性を物語ると同時に、成長株が投資家の期待に応えて反発する力強さも示しています。

また、NASDAQは他の主要市場に比べて新興企業やスタートアップが上場しやすい環境を提供しており、リスクを取ってでも大きなリターンを狙いたい投資家にとって魅力的な選択肢となっています。

両指数の違いを深掘り

比較ポイントNASDAQ100指数NASDAQ総合指数
対象銘柄NASDAQ上場のうち、非金融業種の時価総額上位100社NASDAQに上場するすべての銘柄(約3,000銘柄)
業種構成テクノロジー、消費財、AI、半導体などが中心あらゆる業種を含む(金融、製造、サービスなど)
銘柄選定の基準金融を除外、流動性基準あり(平均取引量20万株以上)明確な選定基準なし(NASDAQに上場していれば対象)
価格の変動幅高め(大型株の影響強)やや穏やか(小型株も含む)
計算方法時価総額加重方式時価総額加重方式
市場反映の範囲成長株・大型株の動向を中心に反映NASDAQ市場全体の動向を広く反映
投資家にとっての意味ハイテク大手企業のパフォーマンスを測る指標NASDAQ市場全体の健康状態を測る指標

表:NASDAQ100とNASDAQ総合の比較

このような情報を基にすると

「NASDAQ100」と「NASDAQ総合(NASDAQ Composite)」は、どちらもNASDAQ市場を代表する重要な指数ですが、その構成や反映する市場の範囲には大きな違いがあります。NASDAQ100は、テクノロジーを中心とした成長株に焦点を当てており、特に大手IT企業の動向を追う投資家にとって不可欠な指標です。一方で、NASDAQ総合はNASDAQ市場全体のパフォーマンスを反映するため、より広範な市場の動向を把握したい投資家にとって重要な情報源となります。

これらの情報を基に、投資家は自身の投資目的や戦略に応じて、どちらの指数を重視するかを判断できるでしょう。たとえば、テクノロジー関連の企業や成長株に注力する投資家にとっては、NASDAQ100が有力な選択肢となります。実際にNASDAQ100に連動するETF(上場投資信託)としては、「インベスコQQQトラスト(QQQ)」が代表的で、米国市場でも非常に人気のある商品です。ETFを活用すれば、個別株を選ばずとも、指数全体に分散投資が可能になります。一方、NASDAQ市場全体の動向を把握したい投資家には、NASDAQ総合に連動するETF(例:ONEQなど)を参考にするのも一つの方法です。こうしたETFの活用は、指数理解を実際の投資判断に結びつけるうえで大きな助けとなるでしょう。

参考文献
“ナスダック(NASDAQ)とは|NYダウやS&P500・NYSEとの違いをわかりやすく解説” . OANDA FX/CFD Lab-education(オアンダ ラボ) . https://www.oanda.jp/lab-education/dictionary/nasdaq/, (参照 2025-04-29).
“ナスダック総合指数とは何か? 長期の時系列チャートや構成銘柄、ナスダック100との違いを解説” . QUICK Money World . https://moneyworld.jp/news/05_00058719_news , (参照 2025-04-29).