最近、「円安」という言葉をニュースでよく耳にするようになりました。円安になると、輸入品の価格が上がったり、海外旅行が高くなったりと、生活面でマイナスの印象を持つ人も多いかもしれません。しかし一方で、個人投資家にとっては、円安は「資産形成のチャンス」となる可能性もあるのです。
この記事では、円安・円高の基本から、個人投資家がどのように為替相場を活用できるのかを、わかりやすく解説します。
円安・円高とは?
「円安」「円高」とは、日本円の価値が外国通貨に対して高くなったり低くなったりする状態を表す言葉です。
例えば、1ドル=100円だった為替相場が、1ドル=150円になったとしましょう。これは1ドルを買うために必要な円が増えたことを意味します。つまり、日本円の価値が下がった状態、これが「円安」です。反対に、1ドル=150円から1ドル=100円になれば、日本円の価値が上がった状態、つまり「円高」です。
簡単にまとめると、
円安:円の価値が下がる → 外貨が高くなる(例:1ドルを得るのに多くの円が必要)
円高:円の価値が上がる → 外貨が安くなる(例:少ない円で1ドルが買える)
円安になると、輸入品の価格が上がり、日用品やエネルギー価格の上昇につながります。一方で、円高は輸入品が安くなり、海外旅行も割安になります。
円安は投資のチャンスになる?
では、円安は投資にどのような影響を与えるのでしょうか。ポイントは以下の3つです。
外貨建て資産の価値が上がる
外貨建て資産とは、ドルやユーロなど、外国通貨で保有する資産のことです。たとえば、米ドルで運用される株や債券などが該当します。
こうした資産を持っている場合、円安になると日本円換算の資産価値が上昇します。たとえば1万ドルの資産を保有していた場合、為替相場が1ドル=100円のときは100万円ですが、1ドル=150円になれば150万円になります。このように為替差益によって資産価値が増えますが、外貨建て資産で得た為替差益は、場合によっては譲渡所得や雑所得として課税対象となることもあります。詳しくは税理士等の専門家にご相談ください。
為替リスクを考慮した投資判断が必要
これから外貨資産に投資しようとする場合は、すでに円安が進行している局面では慎重になる必要があります。今後円高に戻った場合、為替差損を被る可能性があるからです。
このとき有効なのがドルコスト平均法です。ドルコスト平均法とは、毎月同じ金額を投資する方法で、価格が高いときには少なく、安いときには多く買えるため、購入価格を平準化でき、リスク分散の効果が期待できます。為替相場や価格の上下に一喜一憂せず、長期的に安定した投資が可能です。
円安の恩恵を受ける国内企業に注目
円安は日本の輸出企業にとって追い風となります。例えば自動車メーカーや電子部品メーカーは、海外で得た収益を円に換算したときの金額が増えるため、業績が伸びやすくなります。円安局面では、こうした企業の株価が上がる傾向があるため、国内株式投資でもメリットを享受できるのです。
円安を味方につける投資戦略とは?
外貨建て資産の保有で分散投資
円資産だけでなく、米ドルやユーロなどの外貨建て資産を一部保有することで、リスクを逆にチャンスに変えることができます。為替相場の動きに左右されにくい、バランスのとれた投資を目指すことが重要です。
為替ヘッジなしの投資信託で為替差益を狙う
為替ヘッジとは、為替相場の変動による損失を防ぐ仕組みのことです。たとえば、「為替ヘッジあり」の投資信託は、為替相場の動きに左右されないように調整されていますが、その分円安になった場合の為替差益は得られないため、不利になることもあります。
一方、「為替ヘッジなし」の投資信託では、為替差益をそのまま受け取れるため、円安時には有利に働きます。為替相場の動向を読みながら、成長が期待できる地域や国に分散投資するのも一つの方法です。
円安メリットを受ける国内株に注目
日本企業の中には、為替相場の変動に大きく影響を受ける企業があります。たとえば、トヨタやソニーなど海外売上比率が高い企業は、円安時に業績が伸びやすくなります。
こうした企業を見極めるには、IR情報(インベスター・リレーションズ情報)を活用するのが有効です。IR情報とは、企業が投資家向けに公開している業績や戦略、財務データなどの情報で、会社の強みや将来性を判断する材料になります。企業ホームページや証券会社のサイトなどで誰でも確認できます。
総じて見ると
為替相場の変動は複雑に見えるかもしれませんが、基本を理解すれば資産形成における大きなヒントになります。特に日本のように経済が海外との関係性に大きく影響される国では、為替相場を無視して投資を語ることはできません。また、為替相場は輸出入の動きや経済状況だけでなく、各国の金利差(たとえば日米金利差)にも影響を受けるため、金融政策の動向にも注目が必要です。
円安は、生活コストの上昇というデメリットもある一方で、うまく活用すれば資産を増やすチャンスにもなります。為替相場を敵と考えるのではなく、「理解して味方につける」という姿勢こそが、投資家としての成長につながるのではないでしょうか。
《参考文献》
“円安をチャンスに変える投資とは?円安期におすすめの運用プランと戦略を紹介!” . アドバイザーナビの資産運用メディア . https://adviser-navi.co.jp/asset-management/column/4892/ , (参照 2025-05-02).
“円安・円高で投資すべき商品は変わる? つみたてNISAをはじめるなら、いつ?” . 三井住友銀行 . https://www.smbc.co.jp/kojin/money-viva/money-jiten/0061/ , (参照 2025-05-02).
“【Vol.207】なぜ外貨建て資産を持つことが⼤切なの︖①” . 三井住友DSアセットマネジメント . https://www.smd-am.co.jp/market/naruhodo/2024/naruhodo_vol207/ , (参照 2025-05-02).
“ドル・コスト平均法とは?” . 三井住友銀行 . https://www.smbc.co.jp/kojin/toushin/gimon/start11/ , (参照 2025-05-02).
“初めてでもわかりやすい用語集” . SMBC日興証券 . https://www.smbcnikko.co.jp/terms/eng/i/E0034.html , (参照 2025-05-02).