毎年1月中旬に行われる大学入学共通テスト。受験生にとっては人生の大きなイベントであり、緊張やプレッシャーを感じながら試験に臨むことになります。しかし、こうした重要な試験で問題となっているのが「カンニング」です。
近年、テクノロジーの進化により、カンニングの方法が巧妙化しており、試験を監督する大学入試センターは、その対策に力を入れています。この記事では、近年のカンニング事例と、それに対する大学側の対策について、さらにカンニングをした場合にどんな法的な問題が生じるかについても詳しく見ていきます。
実際のカンニング事例
カンニングが行われると、試験の公正さが損なわれるだけでなく、正当な努力をした受験生にとっては非常に不公平な結果となります。実際に、過去に発生したカンニングの事例を見てみましょう。
令和4年のカンニング事件
令和4年(2022年)の大学入学共通テストでは、受験生が上着の袖口にスマートフォンを隠して試験問題を撮影し、その画像を外部に送信して解答を求めたという事例がありました。
この手口は、東大生などが関与しており、家庭教師サイトを通じて解答を送らせていました。このような不正行為が発覚したため、大学入試センターは対応を強化することを決定しました。
早稲田大学での新たなカンニング手法
さらに、2024年には、早稲田大学創造理工学部の試験で、受験生がウェアラブル端末(スマートグラス)を使って、試験問題を撮影し、それをスマートフォンで外部に送信して解答を求めるという新しいカンニング手法が明らかになりました。
この事例のように、テクノロジーの進化により、カンニングの手段もどんどん高度化しており、試験を監督する側はその対策に追われています。
大学入試センターのカンニング対策
こうしたカンニングの事例を受けて、大学入試センターは対策を強化しています。例えば、以下のような対策が取られています。
スマートフォンの取り扱い強化
従来、試験中にスマートフォンを使わないようにとの注意書きが机上に掲示されていましたが、それだけでは不十分でした。令和5年度以降、試験前に受験生全員に対して「スマートフォンの電源を切り、バッグに収納する」という指示が徹底されています。
また、試験監督者が会場内を巡回し、スマートフォンを使用していないか確認する回数も増えました。このように、監視を強化することで、不正行為を未然に防ぐことが目的です。
最新の監視技術の導入
近年では、試験会場内に監視カメラを設置し、試験中の受験生の行動を常にチェックする方法が導入されています。また、スマートグラスなどのウェアラブル端末を使用したカンニングに対しても、専用の検出機器を導入するなど、テクノロジーの進化に合わせた対策が取られています。
これにより、不正行為が発覚しやすくなるため、受験生も安心して試験を受けることができる環境が整いつつあります。
カンニングの法的な問題
カンニングを行うと、試験を受ける資格を失うだけでなく、法的な責任も問われることになります。カンニングに関連する主な法的な問題について見ていきましょう。
偽計業務妨害罪
カンニングを行うことは、「偽計業務妨害罪」として法律に触れる可能性があります。この罪は、試験官や試験の運営を行っている大学入試センターなどを欺いて、不正に試験を進めさせようとする行為に適用されます。
例えば、スマートフォンを使って外部に解答を送信し、それをもとに解答を進める行為は「偽計業務妨害」に該当する可能性があります。
偽造文書の使用
また、なりすまし受験や替え玉受験などの不正行為は、「有印私文書偽造罪」や「偽造有印私文書行使罪」に該当します。これらは、試験に必要な書類や証明書を偽造する行為です。たとえば、他人の名前で試験を受けるために代わりに試験を受ける行為は、これらの犯罪に該当します。
オンライン試験での不正
最近では、オンライン試験が導入されることもありますが、そこでの不正行為も問題になっています。オンライン試験で他の人に代わりに試験を受けさせる行為は、「電磁的記録不正作出罪」や「不正作出電磁的記録供用罪」に該当することがあります。
インターネットを通じて、試験内容を不正に取得し、それを外部に送信する行為は、厳しく処罰される可能性があります。
カンニングをしてしまう気持ちは分かるが…
受験生にとって、大学入試は人生を大きく左右する重要な試験です。試験に対するプレッシャーや緊張から、「少しくらいのカンニングなら…」と考えることもあるかもしれません。しかし、カンニングを行った場合、合格するどころか、大学への進学ができなくなるだけでなく、法的な問題にも直面することになります。
カンニングが発覚した場合、大学に入学することはもちろん、その後の人生にも大きな影響を与える可能性があります。カンニングをしてしまうことで、最初は一時的に楽をすることができても、最終的には自分の人生を大きく損なう結果を招いてしまうことを理解しておくことが重要です。
テクノロジーの進化と未来への期待
カンニングの方法が年々進化していることは驚きです。特に、スマートフォンやウェアラブル端末、さらにはSNSを利用した不正行為は、以前では考えられなかった新しい手口です。テクノロジーの発展により、これからさらに新しい不正行為が登場する可能性もあります。
しかし、その一方で、監視技術や対策も進化しており、これからも不正行為に対する取り締まりが強化されることが期待されます。また、これからの社会では、テクノロジーの発展によって、今では想像もできないような新しい技術が登場するでしょう。
それに伴い、教育や試験の在り方も変わる可能性があります。未来にどんな技術が登場するのか、そしてその技術がどのように私たちの生活に影響を与えるのかを考えると、非常に興味深いものがあります。
結論
大学入学共通テストのような重要な試験でカンニングをしてしまうことは、自分自身の未来を大きく損なう結果となります。カンニングは不正行為であり、法的に厳しく処罰される可能性があります。
受験生は、どんなに試験が難しく感じても、正当な方法で自分の力を試すべきです。テクノロジーが進化し、カンニングの方法が巧妙になる中で、私たちも正しい選択をし、誠実に挑戦することが求められています。